南アフリカワイン:主な産地、ブランド、テロワール、ヴィンテージの違い
南アフリカの主な産地とブランド、ヴィンテージについてまとめました。
あくまで私(三宅)のこれまでの経験と見解です。
それでも、スタッフやお客様に少しでもヒントになれば幸いです。
参考程度に捉えて頂ければと思います。
我々は、ワインの味やテロワールを理論的に定義することにより、
自分自身も、またお客さんや他人に話す時も
「分かりやすく」理解/伝えることが出来るので、
無理矢理(強引に)当てはめてしまいがちなこともある。
従って、以下も感覚的な部分が多々あることをお許し頂きたい。
ワインの味わいに関しては、酸、果実味、ミネラルは、全体のバランスの中での
相対的なものなので、絶対ではない。
周知の通り、ワインは、土壌、気温、降水量、地形など
周囲の自然環境によってワインの味に影響します。
また、栽培や醸造過程において、人が介入する部分もあって、
最終的な商品として出来上がる。
従って、ワインの味わい=100%テロワールということではない。
ステレンボシュに関しては、ワイナリーも多く、
より小さなワード(地区)も少し記載した。
他のエリアもワードがありますが、
私もまだ細かなワードの違いを理解していないので省いています。
テロワールの要素として、
畑の斜面は、南や東が涼しく冷涼、北や西向きは温かい。
標高は100m上がる毎に平均気温は1度下がる。
土壌は花崗岩はミネラルを多く感じる。
頁岩や粘土はワインに骨格やボディを与える。
ワインと相性料理に関しては、
ワインは西洋文化なので洋食に合うのは当たり前。
私は、果実味の強いワインはフレンチなどの洋食系に、
ミネラルの強いものは和食によく提案しています。
フレンチなどは、オレンジソース、ベリーソースなど
果物を使った酸と甘みを感じるソースもあり、
果実味の強いワインをお勧めしています。
反対に和食はフルーツソースはあまりなく、
塩、しょうゆ、酒、味噌などの調味料や
魚や昆布、椎茸などの旨みが中心になるので、
ミネラルが強く感じるワインを提案しています。
イタリアンは難しいですが、フレッシュな和食の要素もあります。
最近は、和食も寿司、天ぷら、焼鳥、焼肉なども塩で食べることもあり、
これらのお料理には、ミネラルの強いワインを提案する場面も増えています。
■ステレンボシュ:
200以上の生産者が存在し、南アフリカワインのメッカでもある。
7つのワード(地区)に別れている。
海あり、山あり、起伏に富み、様々な地形がある。
年間降水量600-1200ミリ。
シュナンブラン、シャルドネ、ソーヴィニョンブラン、
カベルネソーヴィニョンも有名で、その他、ボルドー赤品種、
シラー(シラーズ)、ピノタージュなど、様々な品種が植えられている。
白ワインの果実のイメージは、グレープフルーツなどの柑橘系から
梨、桃、トロピカルフルーツなど。
ステレンボシュのワインは、一言で表すならバランス感。
酸と果実味のバランスが良く、平均点の高い、
従って、ワイン入門者からベテランまで幅広い層に提案しやすい。
★参考地図:ステレンボシュ-ワード
<ワード(地区)>
●シ(サイ)モンズバーグ-ステレンボシュ:
標高200-500m。年間降水量650ミリ。
南西向き斜面が多い。
カベルネソーヴィニョンを中心とした赤ワイン地帯。
ステレンボシュの中では比較的タンニンを強く感じる。
●ポカドライ・ヒルズ:
標高60-400m。年間降水量830ミリ。
南、南西向き斜面が多い。
海にも近く、ワインに酸をしっかり感じる。
また、ステレンボシュの中では一番ミネラルを強く感じる。
提案先は、ワイン入門者よりワインに精通している人向け。
●ボタラリー:
標高120-200m。年間降水量650ミリ。
北向き(温かい)斜面が多い。
上記ポカドライとシモンズバーグの間にあり、
味わいもちょうど間の感じ。
酸もあるし、温かい果実味も感じる。
ワイン入門者でも分かりやすいワイン。
●バンフック:
200-500mと標高が高く、降水量は年間1000ミリと豊か。
南向き(冷涼)斜面が多い。
酸もあり、果実味もある。両方が高いバランスをとっている。
●ヘルダーバーグ:
標高60-400m。年間降水量760ミリ。
海に近くステレンボシュの中では比較的冷涼。
ステレンボシュの中では、ハーブ、ミント、鉛筆の芯(赤ワイン)など
グリーンノートを一番感じる地区。良い意味ではフレッシュでエレガントに感じるし、
人によったら青みが嫌いな人もいるかもしれない。好き嫌いが出やすい産地かもしれない。
例)ブーケンハーツクルーフ・ステレンボシュ・カベルネ、ロングリッジ、
キアモント、ドルニエ、ウォーターフォード(左記3社は、一部の畑がヘルダーバーグ地区)、
★相性料理:ポカドライなど、ミネラルを強く感じるものは和食に。
ヘルダーバーグのロングリッジは、和食でも良い。
その他、果実味の強いものはフレンチなどに。
■エルギン:
標高200-600m。年間降水量は1000ミリ前後と豊か。
山に囲まれた盆地で、海風が山にあたり雲が発生し易く、
南アフリカで最も雲りの日が多い地区。
雲により直射日光を遮ることができ、涼しい日が多い。
また、標高も高いため、昼夜の寒暖さが大きい。
夜はかなり冷える。
シャルドネ、ピノノワール他、白ワインの産地。
白ワインの果実のイメージは、レモン、ライム、グレープフルーツなどの柑橘系。
ワインの酸はシャープ。
例)ポールクルーバー、キャサリンマーシャル、ジュリアンスカール・エヴィデンス。
★上記3社は、全て酸のしっかりしたワインですが、
ポールクルーバーとジュリアンスカールは、
果実味が強く、料理はフレンチ向き。
キャサリンマーシャルは和食にも提案し易い。
■ウォーカーベイ/ヘメルアンアード:
標高50-400m。
海に近く、昼夜を通して冷涼。
シャルドネとピノノワールの銘産地。
白ワインの果実のイメージは、レモン、ライム、グレープフルーツなどの柑橘系。
ワインの酸はエルギンと同じくシャープ。
アタラクシアは、ミネラルを強く感じ、
ジュリアンスカール・コンフルエンスは、海の塩を感じる。
★共に和食への提案も可能。
■コンスタンシア:
南アフリカで最も古いワイン産地。
周囲3方を冷たい海に囲まれ、冷涼気候。酸もしっかりしている。
年間降水量も1000ミリ前後と十分にあり、灌漑の必要が少ない。
ソーヴィニョンブランを中心に白ワインの産地。
白ワインは、フレッシュで比較的瑞々しい(ワインに水分を感じる)、
少し線の細い、日本ワインの白に近いスタイルのワイン。
★料理提案は和食でも良い。
■スワートランド:
①スワートランド・インデペンデント・プロデューサーズ(SIP)の
メンバーらの活躍で近年素晴らしいワインを産出している。
暑く乾燥したエリアで、降水量と400ミリと少ない。
古くからブッシュヴァインが多く、古木も多く残っている。
灌漑無しの所も多い。
テロワール主義、不干渉主義など、SO2以外は何も入れない
ナチュラル系ワインも多い。
暑いエリアなので、酸を残すため、比較的早めに収穫している。
従って、果実味よりミネラルを強く感じるワインが多い。
★提案料理としては和食も良い。
例)デイビッド&ナディア、シティンオンアヒル、ヴィルダーハースト
②それ以外として、比較的果実味もしっかりしている生産者もある。
例)リーベック
※ブッシュヴァインの長所短所:
ブッシュヴァイン(株仕立て)は、垣根式に比べて、自然とブドウの出来る数が減り、
凝縮した果実が出来る。しかし、ブドウが地面に近いため、地熱が伝わる、
農作業もしんどいなどのネガティブな意見もある。
写真は、ステレンラスト(ステレンボシュ・ボタラリー地区)のサンソーのブッシュヴァイン。
■パール:
ステレンボシュの北側にあり、比較的温かく、
酸は穏やかで果実味のしっかりしたワインも多い。
白はシュナンブランなど。赤はカネルネソーヴィニョン、シラー(シラーズ)、ピノタージュなど。
味わいとして、ブラハムはパールの中ではクールでドライだが、マンは少し甘みも感じる。
■フランシュック:
盆地で昼夜の寒暖さがある。
気温は場所により温かい所、比較的冷涼な所がある。
酸は穏やか。
■ロバートソン:
盆地で昼夜の寒暖さがあり、乾燥した地区。
ワインは果実味がしっかりしている。酸も程よくあり。
シャルドネ、カベルネソーヴィニョン、シラー(シラーズ)などが有名。
例)ロバートソン
■トゥルバッハ:
盆地で昼夜の寒暖さのある地区。
ワインは果実味がしっかりしている。
例)クローヌ
■最近のヴィンテージについての個人的な感想。
<2015年>
南アフリカワインの過去30年でも
最高ヴィンテージと言われる。
ステレンボシュや他のエリアでも赤ワインに
美しいタンニンと引き締まった骨格を感じる。
買っておくべきヴィンテージ。
<2016年>
水不足で乾燥した年。
2015年より大人しく、優しい骨格のヴィンテージ。
<2017年>
2年連続の水不足で乾燥した年。
2015年にも負けないグレートヴィンテージ。
カノンコップの赤ワインなどを見ても
2017年は素晴らしいし、
特にステレンボシュやその周辺地域の2017年は秀逸。
買っておくべきヴィンテージ。
<2018年>
3年連続の水不足で乾燥した年。
スワートランド、ステレンボシュなどで、
いつもの年より
甘みを感じたり、
濃厚な色になっている物が見受けられる。
酸も少し弱い、
気を付けて見ないといけない△のヴィンテージ。
一方、エルギンやへメルアンアードなど、
冷涼地区は、別に悪くないし、
それほど影響受けている様子はない。
2018と2017では、
平均すると2017ヴィンテージを取るべきかと。
<2019年>
水不足も少し解消したが本来の水位まで回復していない。
白は2018年よりみずみずしく生き生きとしていて良い。
赤はまだリリースされてない物も多く、
今後見ていかなければならない。
<2020年>
水不足の問題も水位70%まで回復した。
あまり暑くなく、冷涼な年。
グレートヴィンテージになる可能性あり。
以上、御参考に。
上記の情報は、まだまだ中途半端ではありますが、
今後、随時修正、追記、更新していきたいと思います。
<参考文献>
https://winemag.co.za/wine/opinion/tim-james-does-terroir-matter/
https://www.wosa.co.za/The-Industry/Winegrowing-Areas/Winelands-of-South-Africa/
http://www.magistervini.nl/lmbinaries/arjen_pleij_mv_scriptie_stellenbosch_englisch.pdf